「畑」に「山」をつくる炭素循環農法!静岡県浜松市で無農薬農家を営む馬淵さんを再訪問
今回ココノミスタッフが訪問させて頂いた農家さんは、炭素循環農法でおいしい野菜を育てている静岡県浜松市の馬淵さんです。今回が2度目の訪問となります。
前回に引き続き、微生物の繁殖にこだわった炭素循環農法の極意を教えていただきました。サツマイモや、ズッキーニ、シシトウ、ナス、トウモロコシ、スイカ、メロン、空心菜などの、さまざまな野菜を見学させていただきました。
「畑」に「山」をつくる
ーーお久しぶりです(笑)今日はよろしくお願いします。
馬淵さん「こんにちは(笑)」
ーー炭素循環農法について教えて下さい。ここの土の中はどうなっているのですか?
馬淵さん「ここに、深さ30センチ、幅28センチで穴を掘ってあります。機械でね。それで、中に竹を入れます。そうするとどうなると思います?」
ーーどうなるか…わからないです。
馬淵さん「竹が入っていると空間が出来ます。竹が丸で、竹の中も丸で空気が入るのですよ。それに、ここ盛り上がっていますよね、これが山でこれが谷になって、水捌けが良くなります。」
ーーなるほど。
馬淵さん「炭素循環農法というのは、自然の山を真似しているって事です。」
ーー山を作ったという事ですね!
馬淵さん「そうです。山を畑に作りました。山というのは、斜面があって水捌けが良く、微生物がたくさんいます。山は、木が生えていて、枝が落ちて、落ち葉が落ちて、それらが積み重なって空間が出来て空気が中に入っていく。土をめくると白い黴があって、それが微生物ですね。山は3つの条件を兼ねそろえています。それを畑で真似をしています。これが、炭素循環農法です。」
ーーすごいですね。
馬淵さん「肥料は入れないで、微生物の餌を入れて、微生物に養分を作ってもらいます。」
ーー微生物も自然に増えていくのですね。
馬淵さん「そうです。微生物をEM農法みたいに入れないのですよ。なぜなら、入れなくても、土の中に微生物は絶対いますから。」
ーーわざわざ入れる必要はないという事ですね。
馬淵さん「ただ、環境が悪いと微生物は少ないですけど。環境がいいと多いです。」
ーーその場合はどうするのですか?
馬淵さん「環境を良くしてあげます。そうすると、増えていきます。」
ーーなるほど。
肥料を入れると微生物が死んでしまう
馬淵さん「肥料を入れると微生物が死んじゃいますね。」
ーーそうなのですか?
馬淵さん「例えば、山でおしっこしたら、怒られるのですよ。キノコが生えなくなるって。おしっこって、牛糞と同じで窒素が入っています。だから、肥料をあげたことになります。そうすると、キノコが生えなくなるのですよ。」
ーーへぇ~。
馬淵さん「炭素ならキノコが生えるのですよ。キノコの菌は、山程いるのですが、肥料が入っているでしょう?有機でも化成でも。それがあると、キノコが生育出来ないのですよ。私の畑は環境を作ってあげるから、キノコが生えるのですよ。ただ、一夜城みたいに、雨が降ると一気に生えてきます(笑)」
ーー(笑)毒キノコなんかも生えるんですか?
馬淵さん「もちろん、毒キノコも生えますよ(笑)生態系を作るためで、別に食べられるキノコを作っているわけではないので。」
ーーなるほど(笑)
山でも珍しい粘菌が畑で大繁殖!
馬淵さん「粘菌って知っていますか?」
ーーわからないです。
馬淵さん「粘菌というのは、動物と植物の境目みたいな、どっちかわからないような生き物です。それは、山にしかいないのですよ。それが、ここの畑にはいっぱい出てきています。」
ーーすごいですね!粘菌ってどういう漢字でしょうか?
馬淵さん「粘菌は、粘る菌と書きます。見た目は、黄色のドロドロしているかんじです。時間が経つと茶色になって、固まって風で飛んで増えていきます。普通なら、飛んでいっても増える環境がないのですが、私の畑では増えます。窒素がなくて炭素があって育つ環境があるから増えていくのですよ。」
ーー山と同じなのですね。お隣さんの畑とは全然違いますね。
馬淵さん「山にもそんなにいないのですが、畑にはめちゃくちゃいるのですよ。ビックリしましたね(笑)」
ーー粘菌がいるのと、どのような効果があるのですか?
馬淵さん「効果というか…畑が山と同じ環境という事ですね。」
ーーなるほど。粘菌が証明しているって事ですね!
馬淵さん「そうです。まあ、キノコが生えているという事は山と同じですね。キノコは木の子供って事だから、木がない所、炭素がない所には生えないのですよ。」
ーー木の子!なるほど。言葉って上手くできていますね。
畑で色々な野菜を見学
馬淵さん「それでは、一通り畑を見ましょうか。」
ーーハウスがありますね。
馬淵さん「ハウスを作ったのは倉庫にするためです。2/3はね。ハウス内の黒いマルチは日よけですね。エンジンとかが駄目になってしまいますから。向こうは苗作りのためのハウスです。夏野菜の苗を自分で作りたいので。奥の温かいところにはサツマイモを植えてあります。」
ーーここにサツマイモですか。
馬淵さん「種芋にして、芽を出して、それを切って、畝をたててそこに挿します。」
ーー少し出ていますね。
馬淵さん「平な所に溝を掘って、イモを入れます。幅は取ってあるので、ビッシリ入れます。それで、水をタップリかけて、ビニールを覆っておきます。そうすると、水が蒸発して、ビニールに付きます。その水滴が落ちて循環します。水やりをやらなくてよくなります。芽が出たら、ビニールを取ればいいんです。そしたら、もう水やりはなしです。ここは、シュンギクを作っていたのですが、シュンギクは腰の高さまでありました。」
ーー大きいですね。収穫はどうするのですか?
馬淵さん「その先の柔らかい所を採っていました。その後のシュンギクをカッターでバリバリ刈って、短く切って漉き込みました。今回は、下に竹も木も何も入れずにやりました。」
ーー自給自足ですか?
馬淵さん「そうです。シュンギクで作ったサツマイモです(笑)肥料入れないで、出来た物で作っちゃう(笑)」
ーーこの場所で完結しているのですね!
馬淵さん「この中に5本、大玉スイカを一緒に植えておきます。サツマイモが片付いたら、スイカが伸びてきます。」
ーー常に生えている状態ですね。面白いですね。
馬淵さん「この上は、ズッキーニです。これがシシトウ、これがナス、これがトウモロコシ、スイカ、メロン、空心菜です。」
ーー空心菜、いいですね。油で炒めて美味しいですよね。
馬淵さん「空心菜好き?油炒め、いいよね(笑)あっちはカボチャ。少し見えているのが、日本カボチャ、トマト、ピーマン。」
ーーズッキーニとカボチャ、やっぱり同じですね(笑)
馬淵さん「ズッキーニはカボチャだもんね(笑)ここに、ツルムラサキがあります。」
ーーここに植えてあるのはなんですか?
馬淵さん「エン麦です。」
ーーエン麦?
馬淵さん「麦です。こういう物を育てると、土が荒れないのですよ。」
ーーへぇ~。
馬淵さん「向こうにナスとピーマンがあります。ここは葉物ですね。これはスイスチャードです。」
ーースイスチャード?
馬淵さん「葉物野菜です。こっちは小松菜。ここは、長ネギ。他には、ゴボウですね。ゴボウは粘土質の畑はよくないですね。うちは長いのではなく短い物を作っています。あとは、ジャガイモにサトイモ。」
もみ殻をたくさん使うから土がフカフカ
ーー土がすごいフカフカですね。踵が沈んでいきます。
馬淵さん「空気を入れるために、たくさんもみ殻を入れています。その上にエン麦を植えると、根が張って空気が入っていきます。」
ーーもみ殻をたくさん入れるって大変ですよね?
馬淵さん「大量にもみ殻を入れると、一回じゃ入らないです。普通、一回目を入れて耕すと土に出てくるのですよ。三回それを繰り返すと、土じゃなくて最初にいれたもみ殻が出てきます(笑)」
ーー大変ですね(笑)
馬淵さん「三回入れたらこうなりました(笑)」
ーー他の所よりもみ殻がたくさんですね。もみ殻だらけですね(笑)
馬淵さん「どれだけもみ殻を運んだと思います?」
ーーすごい量ですよね。想像がつかない(笑)
馬淵さん「700袋くらいです(笑)1袋に90Lくらい入ります。それを700袋くらい。一回に18袋運びましたね。それを一日で四回、運びました。」
ーー全部、入ったのですか?
馬淵さん「全部入りました。」
ーー凄い!
馬淵さん「炭素循環農法は根を育てる法なのですよ。畑を植物の根でラッピングしてあげるイメージです。森も木ばかり見るのではなく、下の根を見ないと。地下に根っこの森があるのですよ。だから、見えない世界と見える世界が同じです。肥料を入れなければ。肥料を入れると肥料が入っている分までしか根が伸びないですから。肥料を入れないと、どんどん根が伸びていきます。」
ーーなるほど。炭素循環農法って本当に奥が深いですね。今日はたくさん勉強させてもらいました。ありがとうございました(笑)