『おいしく、安心・安全・新鮮な牛乳を。京都府京丹後市の平林乳業さん。』

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京都の最北端、京丹後市。
日本海に面したこの町には、ユネスコ世界ジオパークに認定された山陰海岸の地質遺産が多く存在し、雄大な自然が残っています。
今回ご紹介するのは、京丹後市久美浜町の平林乳業株式会社。
日本海の海辺から5分ほど走ったところに社屋と工場を構えています。
年間で約2,000トン、牛乳パックに換算すると200万本分ものミルクを生産する、牛乳屋さんです。

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平林乳業さんは昭和24年創業(法人化は昭和48年)という70年以上の歴史を持つ老舗。
設立当時からずっと地元の学校給食や病院給食の牛乳を納入していて、地元の方にとって“懐かしの味”として愛されています。
創業者は現在の社長・卓也さんの父にあたる、平林卓さん。現在も会長として会社を支えています。
今回お話を伺った平林聖也さんは、卓さんの孫にあたり、専務取締役を務めておられます。

聖也さんは北海道の大学を卒業後2年ほど他企業に勤め、平林乳業さんで働き始めましました。
営業や製造、配送に至るまで、現場であらゆる事を経験して来られました。
「一部だけちょっとやるより、全体がわかって良いですよね。一人一人が色んな役割を担っています。
地元の小さい企業なので、従業員の方には本当に助けられています。」」謙遜も含めてか、このように仰っていました。

始まりは1頭のホルスタインから。

創業者の卓さんは、戦後という時代背景も有り、経済的に大変苦労なさったそうです。
そんな折、伯父から乳牛を飼う事を勧められました。
乳牛の糞は肥料になり、不要な草を食べてくれて、ミルクも出してくれる。
不安はあったものの、メリットの多さに希望を感じ、酪農を始める事を決意しました。
終戦からわずか4年後の事でした。

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酪農をはじめて最初に導入したのは、1頭のホルスタイン。
“牛”と聞いて連想する白黒模様の牛です。
当初は牛の出産がうまくいかなかったり、生乳を順調に絞る事ができないといった困難の連続でした。
それでも「みんなを健康にしたい」という想いで何度も何度も挑戦し続けた努力が実を結び、次第に牛の数が増えていき安定的に搾乳できるようになりました。

乳牛を飼い始めてから7年が経った頃、やっとの思いで牛乳処理プラントを設置する事ができ、念願の牛乳処理営業の許可を取得。
同時に、自社で処理した牛乳を“ヒラヤミルク”と名付けました。
その昔、平林さんの家系では「平林弥四郎」という名前を襲名するしきたりがあったそうです。
その愛称である”ヒラヤ”が、名前の由来になっています。
「襲名は廃止になっていても、名前は大切に残していこう」という想いが込められています。

受け継がれるお客さんを想う気持ちと、溢れるチャレンジ精神

チャレンジ精神旺盛だった卓さん。
酪農業と牛乳製造業が安定してきた頃に、ジャージー種の乳牛を導入しました。
当時ホルスタインは周辺の酪農家の中ではポピュラーで、みんなが飼っていたそうです。
そこで“平林乳業の特別なジャージー牛乳製品を作ろう!”と、鳥取県の蒜山からジャージー種の乳牛を迎えました。

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(ジャージー牛と創業者の平林卓さん)

ジャージー種の導入後、まずはジャージー牛乳の製造を始めました。
それから少しずつ、牛乳以外の製品にも力を入れるようになり、はじめて挑戦したのはヨーグルトだったそうです。
ヨーグルト製造に詳しい広島の知人の元を訪ねてノウハウを学びました。
そうして完成したのが、地元の酪農家の使用した“ヒラヤヨーグルト”。
非常に評判が良く、地元ではちょっとしたブームになったそうです。
次に、ジャージー牛乳100%使用した“ジャージーヨーグルト”を作りました。
こちらはココノミでもお馴染みですよね。

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こうしたチャレンジ精神と、お客様を想う気持ちはしっかり受け継がれています。
「色んなものを作りたがるんですよねぇ。
お客さんから欲しいと言われたらできれば自分のところで作りたいと思いますよね。
どんどん欲が出て、気付いたらこんなたくさんになっていました。」と言うのは、平林乳業さんの管理部長として活躍している、聖也さんのお母さん。

現在は酪農業を切り離し、ご親族が運営する“有限会社 丹後ジャージー牧場”さんに任せて、平林乳業さんは、生産、製造、加工に専念しています。

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(平林乳業さんのすぐそばにある、丹後ジャージー牧場さん。ジェラートショップも併設。)

牛乳のおいしさは、鮮度が全て。

平林乳業さんの一日は、朝5時から始まります。
全ての製造ラインの機械を2時間かけてしっかり殺菌し、ミルクの到着に備えて準備を整えます。
それだけ朝早くから準備するのは、牛乳の鮮度を守る為。
牛乳は搾ってからいかに手早く処理するかで、おいしさが大きく変わってくるのだそうです。
だから、牛乳が到着したらすぐに作業を開始できるようにしておく事が、とても重要なのだと教えてくれました。

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(洗浄・殺菌中の工場)

「入ってきたらすぐに殺菌する。そうすると、ミルクの持つ甘みが引き立つんです。古くなればなるほど甘みはなくなっていってしまいます。生き物なので早いうちに、おいしいものをおいしいうちにいただく、と言うのが一番だと思っています。」

“地域密着型”で、安心・安全・新鮮な牛乳をこれからも届けていきたい。

今年の6月から、『HACCP(ハサップ)』という食品の安全性を確保する事を目的とした衛生管理制度の導入が義務付けられます。
HACCAP認定には厳しい基準をクリアする必要がありますが、平林乳業さんは昨年難なく取得されました。

「HACCAPを導入したと言っても、これまでとやっている事は同じです。
これまでもずっと毎日検査に出してきましたし、衛生の監査もしています。
大変だった事と言えば、ワープロの書類をパソコンで打ち変えた事ですね。笑
おいしくて、安心・安全なものをつくる、という事はずーっと変わらない。」

昭和48年の設立以来、ずっと学校給食も担当してきた平林乳業さんにとって、品質管理や安全管理を徹底するというのは当たり前の事。
HACCAPを取得するからと言って特別な事をする必要はないのです。
そのお話を聞いて、丁寧に丁寧に牛乳を扱い、消費者の事を想う愛情を感じました。

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(プレーンヨーグルトのラベルは、一つ一つ丁寧に手貼りされている)

“やりたい事はいっぱいある”という聖也さん。
聖也さんは穏やかで、とても控えめな方でしたが、さっぱりした口調で仰ったその言葉から、内に秘めた向上心と情熱を感じました。

「(お客さまには)ありがとう、の言葉しかないです。
うちがやっていけてるのは奇跡みたいなものです。商品の製造においては“どれもおいしい”というのが根底にあるので、ちゃんとした商品ありきで愛していただけてるんだろうなと思います。
だから、これからもちゃんと応えていきたいです。」

ヒラヤミルクが優しい味わいなのは、『おいしい商品を届けたい。』という愛情が表れていたからなのだと、おいしさの秘密を垣間見た取材になりました。

(訪問日 2021/03/29 記・撮影 太田萌子)

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2021.05.07

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