伝統的な野菜の守り手。仲間と協力して農業を営む高知県の吉本さん

生産者インタビュー

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高知県南国市、気候が温暖なこの地域で農業を営む、農楽ファーム(のらファーム)の吉本さんをご紹介します。
もともと、兵庫県にお住まいで、有機野菜をよく食べていたそうです。
そして、有機農業家のところへお手伝いに行く「縁農」を通して野菜を作ること自体への興味が強くなっていったとのこと。
ご退職をきっかけに、奥様のご実家でもある高知県に引っ越し、ご家族で有機無農薬農業をスタートしました。
農家歴は13年。
ご自身のことはまだまだ新米だと笑う吉本さん。
退職後から農業を始めたこともあり、新規就農者のつらさは共感できるそうで、新規就農者支援にも力を入れている農家さんの一人です。

大衆的な野菜も、守るべき伝統的な野菜も

吉本さんの畑では、今の季節、玉ねぎが収穫できます。
今しか食べられない葉付き新玉ねぎはぜひ食べていただきたい作物のひとつで、玉ねぎの葉とは思えないおいしさが感じられるそうです。
もちろん玉ねぎそのものもおいしくいただけます。

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玉ねぎ以外にもブロッコリーやオクラなど様々な作物を栽培している吉本さん。
その中でも力を入れているのが、高知県ならではの万次郎南京や葉ニンニクなどの伝統野菜です。
伝統野菜の作り手が減ったとしても、それらを失くしてはいけないことも事実。
「種苗法が改正され、自分たちで種を作ること自体が難しくなっていくことが予想される中で、伝統野菜を守っていかなければならない。」という使命感を持って栽培を続けています。
高知有機農業研究会の仲間や、土佐オーガニックマーケットで種の交換会を一か月に一度程度実施し、栽培を広めることにも尽力されています。

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おいしい野菜は畑の持つ土の力から。自然に育てることが大切。

数多くの野菜を育てている吉本さんの畑は、MOA自然農法という方法によって、限りなく自然に近い状態にしています。
吉本さんが高知県に引っ越してきた後、農業担い手センターで半年間、土佐フードビジネスクリエイターで2年間農業を学びました。
安全な作物とは何かを考えていく中で、たどり着いた農法がMOA自然農法だったそうです。
自然に近い状態で作物を栽培するため、自然界にもともと存在しない農薬や化学肥料は一切使用しません。
自然と共生することもこの農法の特徴の一つであるため、畑に生えてくる草もできる限りそのままにしてあります。
吉本さんの畑ではその草たちも作物に負けないほど青々としており、畑が持っている土の力が強いことを感じさせます。
「畑が持っている力を最大限引き出す」吉本さんが野菜を作るうえで大切にしていることです。

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仲間と共に考えて、支えあう

最初から農業がうまくいったわけではなく、野菜を作っていく中でつらいことももちろんあったそうです。
農業を始めて2年、さつまいもを育てていましたが、急遽すべて収穫し保管しなければならないことがありました。
しかし、時間が経ちほとんどは傷み、出荷できる商品ではなくなってしまったそうです。
これはご自身の無知や準備不足が招いたことだと真摯に向き合いつつも、吉本さんの息子さんの一声から、芋焼酎を作ることに。それがとても美味しかったとか。
最悪な事態に陥っても、それをどうにかプラスに転じるようなアイディアを仲間と考える吉本さん。
これは、その場その時のことだけではなく、ポジティブに捉えることはいつも意識しているそうです。

ご自身が転農者だということもあり、農家の経験が少ないことはマイナスかもしれませんが、逆に偏見を持たず問題を見ることができることは強みであること。
そして同じ農業を営む仲間は経験が豊富で、栽培について教えていただくなど、ご自身にはない強みがあること。
お互いがお互いを支えあうことができていると思う、とお話ししてくれました。

実際に、吉本さんの畑は共同作付け、共同出荷を行っています。
仲間と収穫できる時期をずらし、長く収穫ができるようにしたり、一人では答えられない大量の出荷依頼にもこたえられるような体制を仲間同士で作っていたり。
新規就農者の方を支えるために、共同出荷によって販路を作り、コラボレーションなどのコーディネートにも一緒に参画してもらうこともあるそうです。

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生産しておわりではない、つながりと信頼

野菜を選ぶ基準としてよく耳にする、「安心・安全」。
安全は農薬と化学肥料が不使用。それでは安心とは何か。
それは、生産者、販売者、消費者の信頼関係から生まれるものだと思う、と吉本さん。

自分の野菜を「吉本さんの野菜だから、ココノミで買うから安心。」と思ってほしい。
そして同じ野菜でも、つぼみのとき、花が咲いているとき、それぞれでおいしい食べ方があることを知ってほしい。
逆に、こんな食べ方が美味しかった、そんな声も聴いてみたいと、最後にお話ししてくれました。

生産者同士のつながりや消費者とのつながり、信頼関係を通して安心・安全を考える、生産しておわりではない、農業のあり方を感じました。
自然と共生しながら生きる。
つい忘れがちなことを、思い出させてくれるような畑。
そこに愛情をもって接している吉本さんの素敵な笑顔と、それに応えるような美味しそうな野菜が印象深い生産者訪問でした。

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ほうもんうらばなし

吉本さんの奥様からレシピを教えていただきました。
「栄養たっぷりの野菜スープ」です。
実際にいただきましたが、とてもほっとするやさしい味です。
心までほんのりあったかくなるような一品。ぜひ、お試しください。

材料(2人分)

材料 分量
玉ねぎ 50g
かぼちゃ 50g
キャベツ 50g
人参 50g
800ml

作り方

・野菜をみじん切りにする。
・水とともに強火にかける。
・沸騰する前に火を弱め、対流するくらいの火加減で約20分蓋をせずに煮込む。
・漉して完成。

保存方法

・作ってから丸2日をめどに飲み切ることをお勧めします。
・冷凍も可能です。

吉本さんの食材一覧はコチラ

訪問先:農楽ファーム(のらファーム) 高知県南国市久枝62
(訪問日 2021/03 /10 / 撮影・文 船橋咲希)

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