京都大学大学院地球環境学舟川晋也教授に伺った農業による環境負荷について

舟川晋也教授〔左〕と弊社代表の石井〔右〕 舟川晋也教授〔左〕と弊社代表の石井〔右〕

  • 舟川 晋也教授プロフィール

    京都大学大学院地球環境学堂学堂長 兼 大学院農学研究科教授。
    京都大学農学部大学卒業し、京都大学院農学研究科にて博士課程修了。平成19年より同大学准教授を経て平成20年より京都大学大学院地球環境学堂・同農学研究科教授を両任する。土壌学を基盤とし、環境農学、農業生態学、生物地球化学等のアプローチを用いながら、世界各地における農業と環境劣化の連関に関する研究を行っている。基礎研究で得られた知見を、どのように農業現場や生態系管理に生かしていくか、模索している。

知らなかった?!農業が環境に悪影響を及ぼす事実

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土壌の専門家で、発展途上国を中心とした海外での農業支援経験も豊富な舟川教授にお話を伺いました。今回のテーマは「農業による環境負荷」です。先にお伝えしておきますが、かなりショッキングな内容です。

突然ですが皆さんご存知でしょうか。

農業も環境に悪影響を及ぼす産業である、と。

工場や科学産業が環境負荷を与えるのはイメージがしやすいですよね。でも、農業って何だか自然と共生しているイメージが有るし、とても環境に優しい産業だと思っていませんでしたか?

実際のところ、そんな事は無いんです。農業が原因となり地球へのダメージは相当蓄積されており、既に取り返しの付かない事態になっている、と主張する説も有ります。

一体、農業の何が環境に悪影響を与えてしまうのでしょうか。

農業に不可欠な「窒素」が起こす海や大気の環境破壊って?!

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舟川教授「窒素です。農業に必要不可欠な元素ですが、これが非常に厄介な代物なんです。」

ここで解説。農作物は土壌の栄養素を吸収して成長します。ちょうど、人間が食物からタンパク質やビタミンなどの栄養素を摂って成長・活動するのと同じように。この栄養素を元素と呼びます。農作物が育つ為に必要な元素は14種有ると言われており、その中でも一番大事な元素が窒素です。人間でいうとタンパク質のような物でしょうか。

「窒素は当然、農作物を育てる為に不可欠な元素。有機肥料にせよ化学肥料にせよ、とにかく窒素は肥料として必ず与える必要があります。その窒素を吸収して、農作物は元気に育って行きます。

ところが、農作物は肥料として与えられた窒素を100%吸収出来る訳ではありません。

その吸収されなかった窒素がどこに行くのかと言うと、大きく2つ。大部分は地中に溶けて行き、地下水を経由して最終的に海まで流れて行きます。

窒素が海まで流れてしまうと、海が栄養過多になり、プランクトン等が大量発生。汚染が進み、食物連鎖も崩れて行きます。

もう一つの経路として、気体として大気中に放出されます。気化する過程でオゾン層を破壊する物質に変質してしまうのが窒素の特徴です」

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つまり、作物を栽培するのに必要不可欠な元素である窒素を与える事が海水汚染とオゾン層破壊に繋がってしまう。

化学肥料に比べれば有機肥料で与える窒素の方が水に溶けにくく、環境に優しいと言えますが、それでも悪影響は少なからず出てしまいます。

窒素を与えなければ解決かもしれませんが、それでは作物がまともに育ちません。これはかなりショッキングな事実です。

「それだけではありません。田畑などの農地を開拓する際、野山を開拓して用地を確保する訳ですよね。

その時点で元々住んでいた生物を追い出している事になります。

それによって種の多様性は減少して行きます。世界規模で見ると、かなりの影響です。」

日本は世界の中でも有数の「環境にやさしい農業」が行える土地だった?!

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一方、良いニュースもあります。

「土壌の専門家として言える事は、日本は環境に優しい農業を行うのに適した土地だという事です。

火山灰による豊富な栄養素、山と平地のバランスの良さ、適度な降水量。この気候・土壌条件が整っている地域はそう多くありません。」

特に、水田は秀逸。あれは本当に環境に優しい仕組みなんです。日本の水には良質な栄養が含まれており、それが言わば肥料の代わりになる。なので、多くの肥料を使わなくても十分な収穫が可能なんです。つまり、窒素を排出しにくい農業です。」

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日本の水田で取れた米を主食とする事は、環境負荷を減らす事にも繋がるんですね。
米離れが顕著になって久しいですが、環境という側面からも米をもっと食べるべきだと感じます。

「野菜に関しても、出来る事はまだまだあると感じます。

まず第一に、多くの農家さんは肥料を与え過ぎています。その結果土壌中で窒素が余ってしまい、これが前述の通り環境に悪影響を与えてしまう。

肥料を減らす事から始めても良いかもしれません。例えば、肥料を半分にすると収穫量はどの程度減るか?もちろん品種によりますが、半分まで減る事は余り無く、8割減程度だったりします。それでも地中に流れてしまう窒素がゼロにはなりませんが、現状に比べれば大分軽減出来ます。そのような取り組みを進めても良いのではないでしょうか?

肥料に関しても、有機肥料と化学肥料の併用が望ましいと思われます。

窒素に関しては、地中に 溶け出しにくい有機肥料をメインで使い、それ以外の元素を化学肥料で補う。こんなやり方も良いのではないでしょうか?」

環境への配慮も考えたお野菜をこれからもお届けしたいです。

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舟川教授のお話を伺って感じたこと。野菜選びの指標として「美味しさ」「安全性」だけではなく「環境負荷の少なさ」も視野に入れて良いのではないでしょうか?先進国ではその視点で野菜を選択する動きも広がって来ているようです。

窒素をなるべく流出させない野菜作り。私たちも農家さんへ取材をさせて頂く際、この点も確認して行こうと思います。

農業もあくまで人工的な産業なので、やはり地球へのダメージはあります。それでも、出来る限り環境負荷の少ない農業を行う事は可能だと感じます。

私たちとしても出来る限り、環境負荷の少ない農法で育てられた野菜をお届けして行きたいと思います。

2016.11.11

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