手間暇かけて美味しいリンゴを作る!長野県佐久市の小林さん訪問

生産者インタビュー

今回ココノミスタッフが訪問させて頂いたのは、長野県佐久市でリンゴ農家をされている小林さんの農園です。小林さんのお話を聞くうちに、普段たべているリンゴを一つ作るのが、どれだけ大変なのか身にしみてわかりました。

認定が難しい「JGAP」にこだわる経緯や、リンゴ農家ならではの苦労など、余すところなくたっぷりと伺います!

新規就農を支える里親制度

ーー本日はよろしくお願いいたします。

小林さん「よろしくお願いします。」

ーーリンゴ農家さんは、新規就農者は多いのでしょうか?

小林さん「新規就農の一貫で里親制度というものがあるんですが、実際にプロの農家の近所に住み込んで、1年365日研修して自立するというものです。それに対して補助金がいくらか出ます。

うちの農家も里子出ていったのが3人独立して、県内で地元の中核的農家になっていて、今度はその里子らが里親になって次の研修生が入っているとか、そういう形になっています。」

ーー私、リンゴ農家さんにお邪魔するのが実ははじめてなんですが、結構木が低いなという印象を受けるのですが。

小林さん「あ、うちは低めに仕立ててます。あんまり高いとパートさんたちが大変なので。僕も高いと大変だしね(笑)」

ーーなるほど、そうなんですね(笑)すごく綺麗にリンゴの木が配列されていますね。

小林さん「これは長野県では最近増えてきているんですけど、高密植といって、リンゴの木の間隔を狭くして、木の高さを3.5〜4mくらいに抑えて量をとるっていう仕立て方です。こっちは植えて3年目、こっちは4年目くらいかな。これはもう6〜7年になりますかね。」

ーーすごいですね。リンゴがいっぱいなってますね〜。

広大なリンゴ畑を見学

小林さん「これ秋映(リンゴの一種)です。」

ーー色が濃いですね!ここの畑はどのくらい大きさがあるのでしょうか?

小林さん「ここで約80アールくらいです。ここで3分の1です。」

ーー大きいですね。何種類くらい栽培してるのでしょうか?

小林さん「えーとね、試作まで含めると15〜16あるんじゃないかな。僕もどのくらいあるか勘定はしてないです。ここから秋映がずーっとあります。」

ーーうわ〜!すご〜い!

小林さん「こっちの奥が紅玉です。」

ーーすごい、キレイ!一つの枝にたくさん実がなるんですね。

小林さん「紅玉はね、ズラズラズラッとすだれのように実らせることができるんですよ。」

ーーこれは間引いたりされるんでしょうか?

小林さん「しますよ。」

ーー間引いてもこんなになるんですね!

小林さん「そうそう。リンゴってのは一つのところから花が4つから5つ咲くんですよ。真ん中にある花が一番いい実がなるんですね。だから真ん中を残して周りは全部摘み取るわけです。

で、摘み取った中で、更にダメなものをとって最終的に残ったのがこういった木になるわけです。だから一般的に市場に流通してるのは、リンゴの木の中でもエリート中のエリートっていうことになるわけです。」

ーー知りませんでした、すごいですね。

小林さん「そのなかでも、傷がついてるものとかは弾かれますので、贈答品なんかで出るのはエリート中の超エリートっていうことになりますね。」

ーー値段もはるわ〜って感じですね(笑)

小林さん「はりますよ(笑)リンゴで機械化なんて全体の仕事の3割くらいしかできないですよ。米なんて99%機械化じゃないですか。変な話、長靴じゃなくてスニーカーだって仕事できるんです。俺はいつも米を馬鹿にして怒られるんですけど(笑)」

ーーフルーツは大変ですね・・・。

小林さん「大体ゴールデンウィークの前半に花が咲くんです。で、そこから11月にならないとふじ(リンゴの一種)は収穫にならないんですよ。そうなると、180日は外にぶら下がっているわけですね。

その間に台風がきたり雹が降ったり、天災のリスクがものすごくあるわけです。鳥に食べられることもあります。で、1年に1回しか採れないときてますからね。だからなかなかリスキーな商売をしているわけです(笑)」

リンゴ農家は虫やダニとの戦い

ーーリンゴは虫がつきますよね?

小林さん「リンゴは大変なのがいくつかあるんですけど、一つは心食虫といいます。蛾の幼虫なんですけど、リンゴに卵を産んで、幼虫がリンゴを食べて穴だらけにしちゃう。心食虫はやっかいですね。あとはハダニですね。」

ーーリンゴにもダニがつくんですね。

小林さん「はい、つきます。葉っぱの裏の色が変わるくらい。ひどいと葉の裏が茶色になります。ダニ剤はなかなか効かないです。年々抵抗性が強くなっていて、人間とイタチゴッコという感じですね。

ダニ剤も新規のものがなかなか出ないので、今は天敵をどのくらい温存できるかとうことを考えてます。うちなんかも今年はめんどくせえから草刈るのやめようってことで草を残したんですが、天敵を残すことに繋がって歯の色が戻ったり、また茶色くなったりするんですよ。つまりこれは天敵がダニを食べたり、追いかけっこしてるってことなんですね。今年のように高温乾燥だとダニはよく出ますね。」

ーーダニによってリンゴに悪影響はあるのでしょうか?

小林さん「はい、ダニにたかられると色がつかなくなります。葉っぱの裏から養分をみんな吸っちゃうから。色がつかなくなるだけじゃなくて、リンゴがちょっと水っぽくなくなってパサパサ感がでて美味しくなくなります。」

ーーそれは困りますね。ダニを食べるダニなど、天敵農薬は使わないのでしょうか?

小林さん「それも試したことはあるんですが、定着しないんですね。だから、できるだけこの土地にいる天敵を増やす方向で考えてます。あとは、ダニ剤を使うにしても天敵にあまり効果のないものとかもあるので、いつどうやって使うかも考えています。」

ーーお医者さんみたいですね。

小林さん「そうそう、処方が必要なんです(笑)」

JGAP認定を受ける理由と安心・安全の考え方

ーー小林さんのリンゴ農園では、JGAP認定を受けていると伺っています。JGAPの認定は難しいですし、すごくこだわっているなと感じるのですけど、そういう栽培方法にしようと思ったきかっけは何かあるのでしょうか?

小林さん「JGAPはね、基本的には栽培方法を問う認証じゃないですよね。要は農場の運営をいかに安全にするかっていうところですよね。で、もう50年くらいになるのかな、うちの父親の代で日本各地の生協との付き合いがあったんですよ。

大阪だとね、大阪いずみ(市民生協)だとか、パルコープ、淀川っていうまあ日本でも指折りの大きな生協と付き合いがあったんです。あとは関東一円も結構あるんですけど。

で、その頃から、大阪って生協ちょっと崩れ始めちゃったんだけど、そんな中でうちの農園に消費者のみなさんが来たりお互いに行ったり交流するようになったんです。うちは農協にもどこにも属さずやってたわけですが、『安全に食べたい』っていう生協の一番はじめの理念を最初から形にしていた訳ですね。」

ーーなるほど、すごいですね。

小林さん「それが親父たちの代の話なんですけど、今では安心安全ってみんながやってるじゃないですか。それを真似して大手量販店が「誰々さんの」とかって顔入りでやったりするじゃないですか。

で、減農薬ってみんなが言い始めてる。うちの減農薬の認証は十数年前からになるんですけど、結局なにをもって農薬減らしてるの?っていう基準がものすごく曖昧なわけですよ。いくら減農薬だと言っても、どのくらい減らしてるのかわからないと説得力がないですよね。

その明確な基準を説明するために、色々やっている中でJGAPが出てきたんですが、認定を受けるのにめちゃくちゃ費用がかかるんです。でも、JGAPなんてものがあることを流通業者も知らない、消費者なんてもっと知らない。それはしょうがないんですけど、でも最近になってそれを評価してくれる取引先もいくつか増えてはくるようになりました。

だから前よりは良いかなと思ってやってるんですけどね。」

ーー小林さんの考える安心・安全とは何でしょうか?

小林さん「僕は単純に農薬を減らせば安心・安全だとは考えていません。

確かに残留農薬っていう問題はあっちゃいけないことなんですけど、今ある法律で定められている基準をオーバーしないようにルールを守ってやりましょうっていうところで、一番安全性を担保できてるのがJGAPかなと思いますね。グローバルとか他にも色々ありますけど、ハードルも高いですし、僕はJGAPでいいと思っています。

ですから、たとえば有機でやっている人たちですら、僕はJGAPを取ってもらいたいと思っています。たとえば近所のおじちゃんおやばちゃんが、うちは農薬も肥料も使ってないから安全だから食べてって言っても、「誰が安全だって証明したの?」ってなりますよね。たとえば倉庫の中で農薬や肥料が積んであったとして、そこから紛れ込んでしまう場合もありますよね。極端に言うとそういうことなんです。

安心・安全というのは、働く人の安全、農薬の安全、肥料の安全、きちんと在庫の管理ができていて、更にそれがJGAPというしっかりした基準のもとで行われていることが重要だと思いますね。」

リンゴは陽が当たらないと赤くならない!

ーー上の方と下の方で、採れるリンゴに違いはあるのでしょうか?

小林さん「いくらか違うんでしょうけど、そんなに大きな違いは無いですね。全部の枝に陽がよく当たるように工夫してますし。」

ーーやっぱりフルーツは日光が大事なんですね。

小林さん「そうですね、陽が当たったほうが良いです。だからリンゴの場合、赤くなってきたらリンゴの周りの葉っぱを手で全部摘むんです。これは摘んだあとなんですけどね。こっちは陽があたるから色がいいけど、裏側は悪いでしょ?」

ーー本当ですね。

小林さん「だから葉っぱを摘んだあとに、場合によっては実を反転させることで、万遍なく赤くなるわけです。」

ーーそんな作業があったんですね。リンゴは赤いものだと思ってました・・・。

小林さん「リンゴみたいに赤い果物は、陽が当たらないと赤くならないですよ(笑)」

ーー全然知りませんでした。

小林さん「ココノミさんを通じて、ぜひ消費者の皆さんにも知ってほしいですね。」

ーーはい、任せてください!

小林さん「そういう生産の現場を消費者まで届ける手段が本当に限られているのも今の問題点ですね。今はなんでもスーパーで画一的にパックに入れて売ってますよね。昔は八百屋のオヤジが『どこどこのスイカがあと一週間まてば入るから待ってなみたいな奥さん』みたいに消費者教育をしてたんです。でも今はそれをやる人がいなくなっちゃいましたね。」

ーーたしかに八百屋さんとか今は見かけないですものね。

小林さん「だから、是非それは消費者を窓口にしている皆さんにも知ってほしいし、伝えていってほしいと思っていますね。」

ーーわかりました、ご期待に添えるように頑張ります!本日は、どうもありがとうございました。

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