年間で2400トンを生産するマッシュルームのシェアNo.1!岡山県瀬戸内市の黒田さんを訪問

生産者インタビュー

今回ココノミスタッフが訪問させて頂いたのは、岡山県瀬戸内市でマッシュルームを生産している企業様です。

シェアNo1を達成しているノウハウの秘訣や、マッシュルーム作りへの情熱を、ご案内を担当して頂いた黒田さんにたっぷり伺うことができました。

シェアNo.1のマッシュルーム企業を訪問

–本日はよろしくお願いいたします。

黒田さん「よろしくお願いします。」

–早速ですが、農場について教えていただけますか?

黒田さん「現在は2つの農場でマッシュルームの生産をしています。会社を作って35年くらいになります。

1年間で2400トン弱くらいのマッシュルームを生産しています。1日で大体6.5トンくらいの収穫ですね。

先にマッシュルームを栽培しているところをお見せしますね。」

–よろしくお願いします。

黒田さん「この並んでいるハウスは、マッシュルームの仕込みをしているところです。」

–すごいですね。

黒田さん「ここ、涼しいでしょう?」

–はい、涼しいです。

黒田さん「マッシュルームの育成に適した温度が18度なんです。だから、ここみたいに成長のピークを迎えた栽培棟は、一年中18度をキープしています。

ここはまだ収穫に入れてないですが、もう今日収穫する予定なんです。」

–マッシュルームの収穫は、すべて手摘みですか?

黒田さん「はい、すべて手摘みです。スタッフがナイフでマッシュルームの軸部分をカットし、110gや80gなどの各種トレイに入れていって、そのまま出荷場に持っていきラップをしてシールをしてパッケージ品として出荷という流れになります。

つまり、このハウスのなかで1つのパッケージがほぼほぼ出来上がるという感じです。」

–収穫する方が、すべて選別などされるのでしょうか?

黒田さん「基本的にはそうですね。LパックやMパックに関しては、比較的丸い円形タイプを、色味は変色の少ないホワイト、傷が入ってないものが判断基準となります。

それにプラスして、できるだけ大きさが均等のものを選んで入れていきます。これらはすべて目視で、個人の判断で行っています。」

–形が整っていないものはどうされるのでしょうか?

黒田さん「そうですね、どうしても形が丸くないものなどもでてきますので、それらは業務用としてまとめて販売しています。

そういった業務用の商品が、弊社の商品全体のだいたい半分くらいになっています。」

–形によって味の違いはあるのでしょうか?

黒田さん「味の違いはありませんが、切り取ったマッシュルームは成長して、傘の部分が開いて胞子を出そうとします。

それを抑制するのが2〜5度くらいの温度なのですが、保存方法によってはマッシュルームの傘が開いてしまったり、表面が茶色く変色する場合があります。

次にマッシュルームの培地(キノコに栄養を与え生育させる場所)をご紹介します。」

–はい、よろしくお願いします。

マッシュルームの培地を見学

黒田さん「この培地は、ご覧いただいているように藁です。稲藁と麦藁を発酵させて作る培地です。

この白くなっているのがマッシュルームの菌です。この培養されて菌子がまわった培地が広がっています。

この上からかかっているものがピートモスです。土壌改良材的な意味合いのもので、ホームセンターなどにも売っていますよね。

藁の上にピートモスを4〜5センチ覆土(覆いかぶせること)して、そこからマッシュルームを生やしていきます。」

–これは大体どのくらいで生えてくるものなのでしょうか?

黒田さん「菌を植え付けて、藁の培地ができあがって、大体2〜3週間くらいかけて種菌培養という作業をします。

それが終わったら、ピートモスを覆土して、栽培棟へ入れていきます。

栽培棟に入れてからは、16〜17日で成長のピークを迎えます。1つの培地から、2〜3回収穫が行えます。」

–回数が変わるごとに、キノコに変化などあるのでしょうか?

黒田さん「1,2回目くらいまでは養分が十分に残っているので、ほとんど変化はありませんね。

ただ、3回目となると養分がかなり減っているので、1回目と2回目の4割程度しか生産ができないですし、養分が少ないため品質も劣る場合があります。ですので、基本的には3回目までが限度ですね。

ちなみに3回目に生産するキノコは形もバラバラなものが多いため、バラ積みの業務用になることが多いです。」

とっても大きい「ジャンボ」を見学!

–ジャンボ(商品のひとつで大きなマッシュルーム)もありますか?

黒田さん「はい、ありますよ。このトレイですね。」

–おお〜。

黒田さん「ジャンボは成長の段階で、周辺のマッシュルームを間引いていくんです。そして1つだけ残してやることによって養分が集中するので、こんなふうに大きくなります。

ここはジャンボの棚ですけど、これからまだまだ大きくなりますよ。」

–間引いたマッシュルームはどうされるんでしょうか?

黒田さん「間引くマッシュルームはとても小さな段階なので、商品にならないので捨てていますね。」

–そう考えると、ジャンボは贅沢品ですね(笑)

黒田さん「そうですね、ジャンボを作らない場合と比較すると、収穫できる本数はどうしても少なくなってしまいますね。」

マッシュルーム作りは雑菌との戦い

–マッシュルームを生産する上での苦労などはありますか?

黒田さん「そうですね、先程お話した培地ですが、時間がたつにつれて雑菌が繁殖する危険があることでしょうか。

マッシュルームも菌の一種ですが、いわゆる雑菌が繁殖するにも一番良い環境になっています。ですので、周期を追うごとに、雑菌とのせめぎあいとなります。

対策としては、小さうちに発見をして、早い段階で処置をおこなうことで被害の拡大を抑えることができます。

このフロアに30〜40人のスタッフがいろんな雑菌をもって入ってくるわけですから、周期を追うごとに注意は必要になりますね。」

–培地ですが、3回目が終わったあとは、堆肥にされると聞いたのですが。

黒田さん「はい、収穫後は80度くらいで長時間殺菌を行い、マッシュルームの菌や雑菌、カビなどを殺していきます。これが循環して、土作りに活かされていきます。」

–それは素晴らしいですね。

黒田さん「マッシュルームの生産に関しては、アメリカが先進国で、日本はまだまだ遅れているんです。弊社もマッシュルームの菌に関しては、ヨーロッパから輸入しています。

日本にもあるにはあるんですが、ヨーロッパのほうが商業栽培用の種菌研究がすごく長い年月をかけて行われています。

そのため、品質もよく味も良い菌の掛け合わせを何十年もかけて研究していて、そのパターンが5,6種類できています。弊社そのうちの1つを使用しています。」

–マッシュルームの培地はどのように作られているのでしょうか?

黒田さん「こちらがマッシュルームの培地を作っているところです。マッシュルームの培地は、あのように麦藁と稲藁を原材料として、自然発酵させて作っています。」

–あの上から降っているものはなんですか?

黒田さん「藁に水をしっかりとやるんですけど、その藁が発酵すると茶色い汁がでるんです。

見てくれは汚いですが、あの汁の中にすごく養分が詰まっているんです。その汁を、発酵の促進のために上から水と一緒に撒いてあげているんです。」

缶詰からフレッシュ(生)へ!マッシュルームの歴史

–いろんなキノコがありますが、なぜマッシュルームを選択されたんですか?

黒田さん「うちは2代目になるんですけど、35年前(昭和58年)に設立したんですが、マッシュルーム作りはその8年くらい前からスタートしています。

先代の社長(現・会長)はアメリカの農業研修旅行中に、向こうのマッシュルーム農場やスーパーを見学したんですが、そこでマッシュルームがすごく販売されていることを知ったんです。

その頃、40年前や50年前頃は、日本の食卓で生のマッシュルームは0でした。ところが缶詰はありました。でも実はその頃、日本もマッシュルームの生産は盛んだったんですが、全て缶詰にして海外に輸出していました。

そのため日本で食べることは無かったんですけど、日本もその頃は欧米化が進んで食卓も変化していきましたから、そこにマッシュルームも取り入れられてきたわけです。そこで、先代もマッシュルームを選択した感じですね。」

–先見の明がお有りだったんですね。

黒田さん「いえ、その当時、たしかにマッシュルームの農場って結構たくさんあったんですよ。ところが、ほとんどが加工場に出荷をしている状況で、高度経済成長とともに中国や東南アジアに取って代わられていきました。

で、だんだんと衰退していって、これからはフレッシュ(生)マッシュルームかなということで、生マッシュルームへ参入していった形ですね。

とはいえ、本格的にスーパーなどに生マッシュルームが並ぶようになったのは、だいたい15年くらい前からですね。」

–最近は、マッシュルームの需要はあるんでしょうか?

黒田さん「需要はあるんですが、マッシュルームって生産がとても大変なんです。だから、マッシュルームに需要があるからといって、新規の生産者さんではなかなか作れない状況です。マッシュルームを育てるための設備を持っている農家さんも、あまり多くはないですね。

海外からマッシュルームを育てるためのマニュアルも取り寄せることができますが、なかなか日本の環境にあった設備をつくっていくのは難しいです。

何年か試行錯誤をして、マッシュルームを栽培していくノウハウを蓄積していったうえで、はじめてやっていける感じですね。

なので、新規ですぐにはじめられるという状況ではないです。また、新規がどんどん始めるほど需要が多いわけでもありません。

若い方は結構食べられるかもしれませんが、私たちの年代になると一ヶ月に1回食べるかどうかってところじゃないですかね。」

–ココノミとしても、おいしいマッシュルームをお客様に届けられるように頑張ってまいります。

本日は、どうもありがとうございました。

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