伝統的な製造方法でおいしく、安全なお豆腐を あらいぶきっちんの福田さん

生産者インタビュー

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京都府長岡京市。
勝竜寺城跡など歴史ある場所が多く残るこの土地に、創業37年のお豆腐屋さんがあります。
青いドアがお洒落でどこか懐かしさを感じさせる「あらいぶきっちん」。
先代であり創業者の矢沢さんから継いで2代目の福田さんにお話を伺いました。

あらいぶきっちんの歴史

お豆腐を作り始めたきっかけは、先代の矢沢さんが設立メンバーでもある安全農協供給センターという団体の方から「お豆腐を作ってほしい」と依頼されたこと。
依頼されてすぐに豆腐の作り方を学びに島根に飛び、その後1985年に長岡京市であらいぶきっちんを創業しました。
名前の由来は、矢沢さんがアメリカのニューヨークで出会ったオーガニックレストラン“Alive Kitchen”から。
メニューまで持ち帰って大切に保管するほどこのレストランのことが忘れられず、そのままこの名前を付けたそうです。
2005年に長岡京市内で移転したことをきっかけに、配達だけではなく店舗販売も開始し、さらに多くの方に愛されるお豆腐屋さんになりました。

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必要とされているものを作る、使命感と誇り

福田さんがあらいぶきっちんで仕事をするようになったのは、今から9年前の2003年のこと。元々は会社員でしたが、先代の娘さんとの結婚を機に会社を辞めて、まずは配達担当としてあらいぶきっちんでの仕事がスタートしました。
配達の仕事をしていく中で、お客様から「おいしいね」や、「いつもありがとう」という言葉をかけてもらうことが多かったそうです。
安全でかつおいしいあらいぶきっちんのお豆腐が、多くの方に必要とされていることを知りました。
そして製造に関わるようになってからは食自体にも興味が湧き始め、改めて自分たちの身体のためにオーガニックや無農薬、無添加といった食品の大切さを感じ、安全でおいしいお豆腐を作ることに夢中になっていったそうです。
今ではあらいぶきっちんを継いで、製造の中心となっている福田さん。
手間はかかっても伝統的な作り方と、今となっては珍しい、凝固剤などの添加物を一切使わないお豆腐を守っていかなければならない、なくしてはいけない。
そんな使命感といいものを作っている、という誇りをもって仕事をしています。

余計なものは入れずにとことんシンプルに作る

あらいぶきっちんのお豆腐や油揚げなどの商品は、お客様に安心して食べてもらえるよう、どれもこだわりをつくしています。

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お豆腐作りに必要なものは大豆、にがりそして水のたった3種類。
油揚げではその3種類に加えて揚げるときに使用する油だけ。
それ以外は一切使用しません。だからこそ素材にはこだわります。

原料の大豆や油は国内産で有機栽培のものを、にがりは伊豆大島のものを使用します。
長岡京市は地下水があることも有名で、実はこの土地でお豆腐作りを始めたのは水がきれいだから、という理由でした。
今では地下水は使えないそうですが、水には変わらずこだわって水道水をそのまま使うのではなく、活性装置を通した水を使っています。
そして福田さんが製造で意識していることは、いかに原料である大豆のおいしさを引き出せるか。
福田さん曰く、お豆腐の味自体は大豆がすべてで、おいしい大豆の味を損なわずに、活かせるかどうかが肝になるそうです。

種類の違う大豆を配合して作っているあらいぶきっちんのお豆腐。
大豆によって風味や色味が異なってくるのでそれぞれの配合を調整したり、お豆腐を作る前に大豆を水に浸して給水させる時間を季節によって変更したり。
大豆の味を最大限引き出して活かすために、製造に関わるあらいぶきっちんの社員さんたちと話し合うことは欠かしません。

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今ではお豆腐を機械で製造しているところもありますが、福田さんは手作りということにもこだわっています。
シンプルな食品こそ製造の技術が光る食品でもあるので、製造には細心の注意を払います。
お豆腐を作る工程のひとつである豆乳とにがりを滞留させる技術や、油揚げを揚げる技術は一朝一夕では身につかないもので、練習や経験が必要だそうです。
実際に油揚げを揚げている現場を見学させていただきましたが、油揚げのもともとの大きさは出来上がる油揚げの3分の1程度と小さく、薄い生地。
その生地を110度程度の油で揚げることで一旦伸ばして膨らませ、そして175度以上の高温の油で色を付けるために2度揚げます。
一枚一枚丁寧に手揚げしている油揚げですが、膨張剤を使わず、大豆たんぱく質だけで膨らませるので、きれいに膨らませることは特に難しいそうです。

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伝統的な製造方法を守っていきたい気持ちだけではなく、手間がかかっても手作りだからこそ活かせる大豆の風味を大切にしています。

「おいしい」の一言で、しんどくても頑張れる

毎日お豆腐は1000丁、油揚げは今の時期900枚程度も作っているあらいぶきっちん。
数も多く、また配達時間なども考えて、福田さんが仕事を始めるのはなんと夜の11時頃から。
油揚げは夕方くらいまで揚げているそうですが、お豆腐は店舗に並べるもの含めて朝8時には全て出来上がるようにしています。
最初はこの生活リズムに慣れるまで、かなりしんどかったそうです。
また、生活リズムになれたとしても、夏はエアコンのない製造現場がお豆腐を作る際に出てくる蒸気でさらに蒸し暑くなるので、汗だくになるほど大変だとか。
それでも店舗に足を運んでくれるお客様や、配達で会うお客様との会話で「お豆腐が美味しいね」と言ってくれることが福田さんのモチベーションに繋がっており、あらいぶきっちんを残していきたいと思う瞬間だ、と教えてくれました。
また、最近では技術を残していくために、次代へ伝えていくことも考えているそうです。
取材中もお客様の出入りが多かったあらいぶきっちん。
お客様からとても愛されていることを感じます。
福田さんは気さくな方でしたが、お話を聞いている中で、真摯にお豆腐作りと向き合ってきたこと、そしてご自身が作っている商品を誇りに思っていることがひしひしと伝わってきました。
何より、福田さん自身があらいぶきっちんをとても大切に想っているのだろうな、と感じられた取材でした。

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ほうもんうらばなし

あらいぶきっちんではゴールデンウィーク明けから、夏季限定の商品「青大豆おぼろ」の販売をスタートします(2021年9月頃までの販売予定、原料がなくなり次第終了)。

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この朧豆腐は毎年とても人気の商品で、ココノミスタッフも「おいしいからぜひ一度食べてみてほしい!」と太鼓判を押す一品です。
福田さんのおすすめは、塩をちょっとかけて食べること。塩がお豆腐の味を引き立たせてくれます。
いつもとは違う、朧豆腐のおいしさにはまってしまうこと間違いなし。
2021年5月15日(土)のお届け分から販売開始(2021年5月5日~)となりますので、お楽しみに。

【あらいぶきっちん】
〒617-0821
京都府長岡京市野添2-12-19
営業時間:9:00-18:00
毎週土曜日定休

(訪問日:2021/04/14 文:船橋咲希 撮影:釜野涼)

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