「農業で地域を元気にしたい」チームで支えあう、兵庫県豊岡市の株式会社Teamsさん

生産者インタビュー

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兵庫県の北部に位置する豊岡市。野生のコウノトリの生息地として知られ、美しい自然環境に恵まれた地域です。
今回ご紹介するのは、この豊岡の地でチーム一体となって農業を営む株式会社Teamsさん。
ココノミでもお馴染みの“楽農や(らくのうや)”の名称で親しまれ、豊岡から全国へ、新鮮でおいしいお野菜を届けています。

Teamsさんは平成21年、「農業で地域を元気にできたら」という代表取締役の新免将さんの熱い想いをもって設立されました。
Teamsは“但馬 エコロジカル・アグリ・ビジネス・マネジメント・サービス”の略。

新免さんが声をかけて集まった設立メンバーは、異業種の出身者ばかりだったそう。
この日お話を伺った由良さんも設立メンバーの一人。以前は医療のお仕事や、ホテルマンをなさっていました。地元を愛し、地域に貢献できる仕事がしたいと考えていた由良さんにとって、新免さんから声がかかった事はまたとない好機でした。「これは人生の第二のタイミングだ」と、転職を即決しました。

今年で設立して12年。誰もが未経験の中手探りで農業を始め、試行錯誤繰り返して少しずつ“自分たちの農業”を作り上げてきました。
今では地元のドラッグストアからも出品の声がかかったりもして地元に愛される存在になりました。

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「農業の良いところを採り入れたい」楽農やさんの“ハイブリット農業”

楽農やさんでは、化学肥料を使わない有機農法や自然農法の事を“伝統農法”、化学肥料を使いながら栽培するいわゆる慣行農法の事を“近代農法”と区別しています。
そのどちらも採り入れる農業を“現代農法”とし、楽農やさんではその事を“ハイブリット農業”と呼んでいます。
ゆっくり時間をかけて質の高い野菜を作る伝統農法、効率的な供給ができる慣行農法。それぞれの長所を活かすハイブリット農業を採り入れる事で、質の高い野菜の供給と、安定した野菜の供給のどちらも実現しているのです。
(※ココノミには農薬不使用のお野菜を届けていただいています。)

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コロナ禍も乗り切った、時代を先読みする力

楽農やさんのもう一つの強みは、時代のニーズを先読みして柔軟に対応する力。
設立当初から市場出荷や農協へは出荷はせずに、自分たちで販路を築いて直接取引をしていく、というのが経営方針でした。それだけに、取引先の期待に応え続ける事はとても大切な事でした。
その為には、時代に沿った野菜を提供してニーズを満たし続ける事が必要不可欠だったのです。
取引先は飲食店も多く、今ではメジャーになったケールなどの西洋野菜や、レモンバームやイタリアンパセリといったハーブなど、風変わりな野菜を求められる事も多かったと言います。そういったニーズにも“先読み”の力で、的確に応えてきました。

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(飲食店の依頼を受け開発したモヒート専用のミント)

2020年、新型コロナウイルスが流行し始めた時も、飲食店の需要が減ると予測し家庭用野菜の栽培に一気に切り替えました。
この素早い切り替えが功を奏し、約8倍に増加した個人向けの野菜セットの注文にも対応する事ができたそうです。
野菜は、種を撒いて1週間後に採れるものではありません。だからこそ流行を先読みして、早めに対応していく事が重要なのだと、由良さんは言います。
ご自身も現代農業(農業系の雑誌)で記事を書いたりしているそうで、「こうした転身は得意なところです」と、ニーズの先読みに確かな自信をのぞかせました。

昼夜の寒暖差に黒ボク土、野菜作りに適した環境に恵まれた神鍋高原

楽農やさんの主な圃場(ほじょう…農産物を育てている場所の事)は、豊岡市日高町の神鍋高原にあります。
この辺りの土壌は“黒ボク土”。黒ボク土は、火山灰や枯葉などが分解して積み上がってできた土壌で、色が濃くて柔らかいのが特徴。特に根菜類の栽培に適しているそうです。
また、神鍋高原は寒暖差が大きく、これが野菜作りにとてもいい要素なのだと教えてくれました。

「夜にしっかり冷え込んで涼しくなると、野菜が休む。黒ボク土は色が濃いから、日が昇ると太陽光を吸収してすぐに温度が上がります。野菜がしっかり休んだところで、太
陽光を蓄えた野菜がその光を浴びて光合成し、土の下も暖かくなってくるのでますます元気に育つ。そういう良い循環がここにはあります。自然に助けられました。」

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(鶏糞焼却灰。土のようにサラサラして柔らかく、匂いも一切ない。)

楽農やさんでは今年、試験的に地元の養鶏業者から分けてもらった鶏糞焼却灰を導入しました。
鶏糞焼却灰にはリンが含まれていて、酸性の土に撒くと土壌改善が期待できるのだそうです。
「もし良い結果になれば、積極的に使っていきたいと思っています。
養鶏業者にとって産業廃棄物となる鶏糞が、僕たちには有効な資源になり、地域の循環にも繋がりますしね。」という由良さんの表情はどこか楽しそうに思え、地域への愛情の深さを垣間見ました。

旬の物を新鮮なうちに。鮮度にこだわる楽農やさんの努力

「野菜の一番おいしい食べ方って知ってますか?旬の物を、新鮮なうちに食べる事です。これがうちの一番のこだわりです。」
熱のこもった声で、きっぱりと言い切った由良さん。
その言葉だけでも、鮮度への意識の強さが伝わってきました。

例えばココノミに送っていただいているお野菜。
ココノミの出荷日である金曜日の昼頃には到着するように送ってくれています。このお野菜はいつ収穫していると思いますか?なんと、当日の朝なんです。
効率を考えれば前日に収穫・出荷になりそうなところ、“新鮮な状態で届けたいから”と、当日の朝に収穫しているそうです。
早起きして、丁寧に梱包して、私たちのもとへ。
いつもはじけそうな程みずみずしく、新鮮できれいなお野菜が届きますが、そこには愛情と努力が隠されていたのですね。

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(スイカの苗。取材時はシーズン外の為、スイカはなかった。)

今特に力を入れているのは、スイカです。
スイカは収穫した時点で劣化が始まるのだそう。その為、収穫していかに素早く出荷するかが肝になります。
そこで、スイカの実一つ一つに受粉した日付を記入したタグをつけ、最高の状態で収穫できる日を割り出し、収穫日を管理しているそうです。
だからスイカについては日付指定の注文は受けず、楽農やさんが“最高だ”と判断したタイミングで送っているのだとか。

それほどにこだわって作られたスイカは非常に評価を受け、高単価ながらすぐに完売。
今年はより多くの人に食べてもらえるように生産方法を工夫し、収量を増やすそうです。
「売りたくないくらい自信があります。」と由良さん。なんとも夏が待ち遠しいですね。

地域の活性化と、社員の幸福を願う。株式会社Teamsが掲げる大義名分とは。

「農業を通じて地域を元気にしたい」という想いから始まった、株式会社Teams。
それ故、地域の活性化は彼らにとって使命なのです。
社員の幸福を守り、企業を繁栄させる。そして会社が持続する事で、雇用が継続し、地域の活性化にも繋がる。それが、一企業として掲げる大義名分です。

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意識改革の為に分担制にしていた作業を全員一緒にするように切り替え、お子さんが体調を崩したスタッフがいればすぐに返して全員でフォローする。
チームで助け合う。それが株式会社Teamsさんです。
由良さんご自身も、かつてはサービス業だったのでお子さんの運動会にいく事ができなかったけれど、転職してからはそんな苦悩からも解放されたと言います。
「“何仕事してんねん、そんな場合ちゃうやろ。早く運動会に行きなさい!”って怒られるんですよ。」そう言って穏やかに笑っていました。

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(閑散期に社員の皆さんで作った看板)

(訪問日 2021/03/29 撮影・文 太田萌子)

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