「野菜を通して平和な心を伝えたい」和歌山県橋本市で無農薬農家を営む辻本さんを訪問

生産者インタビュー

今回ココノミスタッフが訪問させて頂いたのは、和歌山県橋本市で無農薬農家を営む辻本さんの農場です。野菜づくりは夫婦お二人でされていて、インタビュー中も優しい人柄で本当に平和を愛しているんだなというのが伝わってきました。

そんな辻本さんご夫婦に、野菜作りへの想いや苦労をたっぷりと伺いました。

「自然回帰」への憧れから、自然栽培を開始

——農業をはじめられたきかっけは何ですか?

辻本さん「農業をはじめようと思ったきっかけというのは、僕の場合は幼少期の記憶まで遡るんですけど、そのへんの子らより魚とか虫がめちゃくちゃ好きで、自然への憧れというのはずっと持ったまま生きてました。

それでその後に、音楽とかも好きだったんですけど、自然回帰みたいなものへの憧れから、『自分の食べ物は自分でつくれなあかん』みたいな思いが募ってきて、なおかつ社会的にも成り立つ暮らしを考えたときに、農業しかないんちゃうかなあって思ってはじめた感じですね。」

——有機よりも自然農法に興味が強かったのでしょうか?

辻本さん「そうですね、興味あったのは自然農法とか、奈良の赤目自然農塾(耕さない農法)とか、最初はその辺に興味をもちました。実際やってみると簡単には育たへんし、そこまでガチガチにしてしまうと自分らが食べるぶんしかほんまに作られへんなと思いまして、やっぱり野菜作るならちょっとでもみんなに食べてもらいたいたいという思いがあって、今はそのバランスをとりながらやってるところですね。」

——肥料にこだわりなどはありますか?

辻本さん「動物性肥料とかは使ってませんけど、自然農法といっても動物性肥料を使用している農家さんも居ます。けど、自分としては納得できるし、動物性肥料を入れる畑には虫の死骸とかも入るし、それを入れへんほうが逆に不自然ちゃうっていう人もちらほら居るし……。

ただまあ、うちは植物性肥料だけでやってきてるので、たまに「ん?」って思うことはありますけど。動物性肥料と植物性肥料どっちがいい?っていうのは、正直まだ分からへんところはありますね。ただそれは自分の中で消化できれば、それでいい問題かなとも思います。自然農法も有機農法も、それぞれ補い合ったほうが、野菜の収穫期間やサイズまで考慮すると、僕的には良いような気がしますね。」

奥さま「お客さんも喜んでくれるし」

——野菜を買うお客様にも良いことが?

奥さま「はい。お客さんも小ぶりの野菜ばかりだとガッカリされる人もいてるので……。たとえば玉ねぎも小さいのより、ある程度大きいほうが使いやすいっていうのもあるし。」

辻本さん「そやね。お客さんの中でも、自然任せの野菜でもいいって人も居ますけど、10人中1人か2人かな・・・っていうくらいですしね。だからまあ、ある程度量も作っていきたいなと思ってます。」

最初は1枚の畑で自然農法から始まった

——最初はガチガチの自然農法をされてたんですか?

辻本さん「一反(畑1枚分)で始めた頃はやってましたね。スコップで溝を切っていって土を上げて、耕さずに硬い草とかを鋸鎌で切って土に入れてみたいな……。でも少しの間しかしてないので、普通は10年目とかから成果がでてくるものなんで。

その中でもトマトはずっと自然栽培で作っていて、それは自然栽培専門のお店に買い取ってもらっています。厳密に続けている自然栽培はトマトくらいですけど、それでも敷草は翌年には肥料になってますし、まあそこまではツッコまれないと思いますけど(笑)」

——大体いつ頃から有機農法へ切り替えられたんですか?

辻本さん「自分で農業はじめて最初の一年くらいは自然農法でやってて、2年目とか3年面とかには有機に切り替えてましたかね。ただ自然農法といっても米ぬかとか油かすとかは結構使って補ってましたし、そこまで自然農法と有機農法に隔たりは感じなかったですね。」

——逆に「動物性肥料を入れない」というこだわりは、どういう思いで?

辻本さん「動物性肥料は動物が何を食べて育てられているかわからないので、特に安全性に懸念があるという点で積極的には使いたくないですね。ただ、例えば自分で飼っているニワトリの鶏糞とか、安全だと言える魚とか、そういったものを畑に戻すのはありかなと思ったりはしてますね。」

——確かに買ってきた鶏糞とかだと、なに食べてるかわからないですね……。

辻元さん「まあ調べようと思えば調べられるんやけど、ずっと植物性肥料だけできてるので入れないっていうのも正直ありますね。

動物性肥料以外だと、米ぬかと油かすを冬の間に発酵させて『ぼかし』を作って使ったりもしてます。そんなに大量には使ってないですけど。」

——種(自家採種)とかはどうされてますか?
辻元さん「種も自分で採りやすい野菜は全部とってナスやオクラなどの夏野菜も8割くらいは全部自分で採った種(自家採種)で育ててますね。買う場合も固定種なんかを扱ってる種屋さんとか。ただ種を取りにくいシーズンのほうれん草や大根の場合は、普通のF1(交配種)も使います。

なので、基本的には自分で採った種を使って、時期を外れた野菜とか緊急的に必要な場合は近場で買ったりしていますね。」

今後も農業を通じて地域へ貢献し続けたい

──今後の夢、これから実現したいことがあれば是非教えてください!
辻元さん「そうだなあ……。まあ、第一は今の暮らしを僕は続けていきたいと思っています。農業をやるにあたって、自分とか家族のことはもちろんやけど、地域とかとの関わりも濃密やから、地域の役にも立っていきたいですね。そんな感じで一生を平穏に生きていけたらいいかな(笑)

僕は割と内向きなタイプなので、でも今回ココノミさんからこういうお話をもらって、少しでも農業の良さとか平和な気持ちが伝わっていけばいいかなって……。」

奥さま「農園の名前も、『地域に根を張っていきたい』という想いが込められてます」

──そうだったんですね。

辻元さん「実際農業をはじめてみて、地域との関わりってやっぱり切っても切れないものだなってのは痛感しています。」

奥さま「都会の住宅街では感じなくなったようなことが、田舎で農業をやってみたら普通にあって、とても大切だなと感じています。子どもを育てるにしても、隣の家のおばちゃんとか、地域みんなが見守ってくれてるっていう感じがありますね。そういうのは絶やしたくなくて、守っていきたいと思います」

辻元さん「最近はこの辺でも農家さんがどんどん減ってきてて、近所でやってる専業農家さんが1人おるんですけど、その人の顔を見ると安心するっていうか。昔はこの辺ならほとんどの人が農家さんだったと思うんですけど、そういうのを想像するとなんか楽しそうやなあって思いますね……。」

奥さま「私たちは無農薬でやってますけど、その専業農家さんは普通に農薬も科学肥料も使ってるんですけど、お客さんを喜ばせたいっていう「想い」はすごく強くて、70歳すぎても現役バリバリで奥さんとやってらっしゃるんです。それを考えると農薬・無農薬にこだわるんじゃなくて、お客さんに野菜を届けたい「想い」が一番重要なのかなとも思いますね。農家さんって凄いなあって……。」

辻元さん「僕も70歳まで続けたいですね(笑)」

奥さまは田舎暮らしに夢中!

──奥さまは元々農業と関わりがあった感じなんですか?

奥さま「いえ、全然なんです(笑)農業がいいなって本気で思うようになったのは、ここでの生活をはじめてからですね。こんな古い民家に住むと思ってなかったんですけど……(笑)実際住んでみたらすごくいい環境で、食べられる野菜もこんなに美味しいんだっていう感動がすごくあって。色々大変ですけど、すごくいい暮らしをさせて頂いてます。普通の主婦に比べると……、」

辻元さん「経験値あがってるんちゃう(笑)」

奥さま「せやなあ(笑)」

──近所に農家さんが多いとバチバチ対立してしまう場合もあるようですが、そのあたりは大丈夫ですか?

辻元さん「あんまりないかな……。」

奥さま「そうやね、私たちは自分たちのこだわりとかをあんまり前面に出さへんからかもしれませんけど、近所の専業農家さんも理解してくださっていて、よくしてくださっていますね。」

辻元さん「まあ思い起こせばちょこちょこ嫌なことはありましたけど、そんなにバチバチにまではなりませんね。」

──性格的な部分で?

奥さま「そう、性格的な部分もあると思います。」

辻元さん「基本的に気が弱いんで(笑)」

──協調性があるんですね(笑)イベントとかは行かれないんですか?

奥さま「月一回くらいは行きますね。そこでお客さんに顔を覚えてもらったりできるので、続けることが大事ですね。」

野菜を通じて平和な想いを届けたい

──最後に、お客様になにか一言メッセージはありますか?

辻元さん「むずかしいですね……(笑)」

奥さま「むずかしいなあ(笑)」

辻元さん「まあやっぱり、野菜は人柄が最大に出ると思うので、同じ野菜でも作っている土地や風土や人によって全部味が変わってくるから、ココノミで野菜を見つけてください。……あれ、なんか違うな?(笑)」

奥さま「ココノミさんの宣伝になってもうた(笑)」

辻元さん「まあ無農薬農家やってる人は、僕も含めてやけど、平和に生きていきたい、心豊かに生きていきたいっていう想いではじめている人ばっかりやから、僕らの野菜を選んでもらえるってことは、そういう想いに共感してもらえてる部分もあると思います。なので、野菜を食べてもらうことを通じて、そういう想いが広がっていったら嬉しいですね。」

──本日は、どうもありがとうございました。

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