『農業は天職!』大山のそばで農業ライフを楽しむ若手農家、鳥取県の國吉さん

生産者インタビュー

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雄⼤で穏やかな大山が見守る街、鳥取県西伯郡大山町。
この場所で農家ライフを楽しみながら、ご家族で農業を営む國吉農園の國吉さんにお話を伺ってきました。
國吉さんは岡山のご出身で、10年ほど兵庫県で暮らした後、奥さまの出身地である鳥取県に移住されたそうです。
もともとは、大好きな車の勉強をする為に兵庫県明石市の高専で、工業や技術の勉強をなさっていました。
しかしその頃、リーマンショックの流れで派遣切りが問題になっていたり、車が大量生産の風潮ではなくなっていたりと、このままでいいのか?という疑問を感じ始めます。
ちょうど卒業するタイミングでもあった事から、“この先”について考えるようになったそう。
そして行き着いたのが、“食”。
『⼈にとって⾷べる事が基本だろう!』と、神戸⼤学の農学部に編⼊しました。

神戸大学卒業後は、持続可能な地域づくりに向けて活動する⻄宮のNPOで2年間活動しました。
そのうちに、どうしても鳥取に戻りたい!と思っていた奥さまが⼤⼭町の“地域おこし協⼒隊”を発見し、國吉さんに提案されたそうです。
アウトドアが好きで、自然に寄り添った⽣活や農業⽣活に興味があった國吉さんは『これだ!』と即決。
地域おこし協力隊として大山町に移り2年間の農業研修を得て、ついに4年前、憧れの農家ライフをスタートされました。

地球にも優しく、おいしいお野菜を育てる自然栽培

國吉農園さんでは、ブロッコリーや白ネギ、トウモロコシ、トマト、じゃがいも、大豆など、年間を通してたくさんの種類の野菜が自然栽培で育てられています。
有機栽培をはじめたきっかけはとてもシンプルで、⾃然栽培で育ったブロッコリーのおいしさに感動したから、とのこと。
植物を肥料として使⽤する緑肥などの方法を用いて、有機農業に取り組んでおられます。

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「農業を始めて直ぐくらいに、(⾃然栽培の)ブロッコリーを⾷べさせてもらったんですよ。それが“うま!”って。
めちゃくちゃおいしかったんです。自分もこんなブロッコリー育てたいって。
それに、自然栽培は自然の循環そのものです。
自然に返して、返した自然で育って、また返して。
山の落ち葉が土にかわって山ができていくように、植物が⼟に返って野菜の栄養分となって、おいしい野菜ができていく。
農薬を使ってしまうと生育は早いけど自然に返す事ができません。
なにより、美味しい野菜を作りたいから、自然栽培をやっています。」

通常、農薬や化学肥料を使⽤した野菜、中でもブロッコリー等アブラナ科の野菜は、農薬や硝酸態窒素が茎に溜まってえぐみが出たりピリッとする感じが残ったりします。
國吉さんのブロッコリーには、それが全くありません。
畑でそのままいただきましたが、すっごく⽢い!
もちろんえぐみもピリッとした感覚もありません。

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(写真に収まらない広大なブロッコリー畑。ご自宅付近に何か所もある。)

景観にも心配り。土作りに欠かせない、緑肥の栽培

國吉さんの自然栽培に欠かせないのは、土作りの要となる“緑肥(りょくひ)”。
緑肥とは、土を耕す際に新鮮な植物を⼀緒にすき込んで、肥料にすること。
國吉さんのところでは主に、キク科やマメ科の植物を育てています。
キク科は病気を減らし、マメ科は野菜の栄養分である窒素を⼟壌に固定してくれて、土が安定するのだそう。

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(ヘアリーベッチ:マメ科)

國吉さんが緑肥として栽培する植物のひとつに、ひまわりがあります。これが地元の人にも⼤⼈気。
見ごろになる7月から8月にかけて、通りかかる⼈が車を停めて写真を撮ったり、地元メディアが撮影しに来たり。

「せっかくなら喜んでもらえる⽅がいいですよね。
今はコロナでやってないですけど、コロナ前にマルシェに出た時なんかは、野菜を買ってくれた⼈にプレゼントしたりしてました。
夏の終わりに(ひまわりを)すき込んでいると、“なんですき込むんだいや︖”とか、地元の人が声をかけてくれて仕事にならない時もあります。笑 うれしいですよね。」

國吉さんの緑肥はおいしい野菜を育てる肥料としてだけでなく、⼈の心を癒す景観作りや、地元の人とのコミュニケーションにも⼀役買っていました。
雑草ぼうぼうよりもきれいな⽅がいいですよね、と言って國吉さんは笑っていました。

若手農家さんならではのフットワークの軽さと行動力

農業を始めて間もない頃は、個⼈向けのネット販売から始めたという國吉さん。
はじめのうちは、やはりなかなか利益がでず、苦労もあったそう。
しかし就農当時、まだ20代半ば。
フットワークが軽く、マルシェや農業関係者が集まるアグリEXPOなどに積極的に参加して、コツコツと地道に営業活動に注⼒しました。
この活動が功を奏し、就農して僅か1年後には営業活動に費やす事ができる時間が減ってしまうほど、安定的に注⽂が⼊るようになっていたそうです。

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(ブロッコリーはひとつひとつ包丁で収穫。農業もコツコツ、営業もコツコツ。)

大山の町で農家をしながら暮らす事

さて、國吉さんが農業を営む大山町。
町名にもなっている“大山”が見守る街です。
このあたりの土は、“黒ボク土”。
大山は昔活火山で、噴火して降り注いだ火山灰からできた土です。
火山灰はミネラルを豊富に含んでいて、お野菜がとても美味しくなるのだそうです。

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(黒ボク土。実際にはより黒く見える。)

土が良いだけでなく、山と海が近くおおらかな自然が感じられる大山の地は、自然に寄り添う生活にあこがれていた國吉さんにとっては、またとない場所でした。
偶然に来た場所ではあるけれど、すっかり気に入ったと仰っていました。
今では移住アドバイザーとして活動したり、飲食業界の農業研修のサポートをしたりと、農業以外にも精力的に活動し、大山の町に貢献なさっています。

農業は天職!農家生活を楽しむ國吉さん

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「農業は難しいけど楽しいです。(野菜が)ああすれば喜ぶかなとか、こうすればうまくいくかなとか、色々考えてやってみるけど、なかなか思ったようには育ちませんよね。
やっぱり生き物が相手だから。
でも、だからこそうまく育った時は嬉しいですね!この冬はネギがうまくいって、糖度が20度を超えたのもありましたよ。」(糖度20度は、果物級!)
「農業は天職ですね!」取材の後半に、國吉さんが仰った⾔葉が、とても印象的でした。
アウトドアが好きで、太陽を浴びるのが好きで、自然が好きで、おいしいものを食べるのが好き。
もちろんしんどい事もあるけれど、農業をやめたいと思った事は⼀度もないのだと。
明るくポジティブ。國吉さんの有機農業への挑戦は、きっとこれからもまだまだ続きます。

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國吉さんの食材一覧はコチラ

(訪問日 2021/ 03/15 撮影・文 太田萌子)

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